いわゆる「大量広告事務所」による債務整理二次被害の根絶を求める決議
弁護士や司法書士による多重債務の整理に際して、昨今、看過しがたい二次被害が発生している。無謀な借金整理で債務者の生活再建を妨げ、債務被害を拡大する一部の弁護士事務所や司法書士事務所による「貧困ビジネス」被害である。
彼らは、インターネット動画を主な広告媒体にして大量集客を図り、中には、あたかもたやすく借金が減額できるかの如くなかば偽りの宣伝をするところさえある。大量集客なるがゆえに、相談者との直接の面談は殆どか全くなされないまま、本人の経済生活全般に亘っての再建よりも自らの営利を優先させる結果、自己破産や個人再生など本人の生活再建には役立つものの労力を要する手続は敢えて回避し、簡便ではあるが本人の利益にならない無謀な長期分割の示談に落とし込む整理方法がとられている。
昨年、全国クレサラ生活再建問題被害者連絡協議会(被連協)が実施したアンケート調査結果によると、このような大量広告事務所には以下のような特徴がみられた。
① 会わずに処理
弁護士・司法書士が相談者本人と直接面談をしないか、面談をしても初回のみかごくわずか。実務の大半は事務員が担い、監督も行き届いていない。事務員でない者に事務をさせている「非弁提携」「非司提携」の疑いのある事務所もある。
② 異常に高い報酬額
報酬額が異常に高く、依頼する前よりも負担が増えた。報酬の分割支払いが出来ないと、すぐに辞任された。報酬の取り立てがきびしい。
③ 本人の家計・生活を考慮しない、無理・無謀な任意整理
家計生活の全体を考慮に入れた相談をしてくれない。負債総額から破産状態であることが明らかなのに、自己破産や個人再生など総債務額を減少させる手続をとらず、あえて返済困難な任意整理にしようとする。
④ 本人に不利益な助言や事件処理
相手がヤミ金業者であるにもかかわらず安易に元本の支払いを指示するなど、依頼者の利益に背く問題のある助言や事務処理をおこなう。
一般に相談者は、依頼する法律専門家がその専門知識を駆使して、問題を解決しようとしてくれる存在であると信頼しており、この信頼を基盤にして法律事務は行われる。
にもかかわらず、大量広告事務所は、こうした法律専門家に対する社会的信頼に背き、自らの営利を優先させ、逆に相談者をさらなる貧困被害に落とし込む、裏切り的とも言える事務処理を大量に行い、あまたの二次被害を作り出しているのである。
深刻なのは、相談者が弁護士や司法書士という法律実務家に対し、高い社会的信頼を寄せているがため、こうした広告事務所らによる被害が自覚されにくく、なかなか告発されないという実情があることである。法律実務家に対する社会的信頼を維持する観点からも、法律実務家や実務家団体自身が自浄作用を発揮し、こうした被害を根絶するために立ち上がらなければならない。
そこで、私たちは、大量広告事務所による債務整理二次被害を根絶するために、全国的運動を担う団体組織を立ち上げ、以下に掲げる観点から日常的・継続的な活動を進めるとともに、日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会をはじめとする専門職団体に対しても同様の観点からの取組みを強化するよう要請するものである。
(1)業界規制の適正かつ厳格な実施
債務整理を謳うインターネット等の広告のうち、弁護士会、司法書士会などの業界規制に明らかに反する過度なものについて、業界規制を適正かつ厳格に実施すること。
(2)非違事案の告発
債務整理を謳う広告のうち、虚偽ないし誤認を生じさせる事案については、発見次第、躊躇することなくマスコミ等に公表をするほか、会に対する懲戒請求をふくめ個別的かつ社会的に告発を行う。
(3)被害事実の掘り起こしと防止啓発
各種相談会やアンケート活動などを通じて、二次被害事案を掘り起こすとともに被害防止のための啓発活動をすすめる。
(4)被害救済・回復のための活動
被害の掘り起こしをすすめながら、適切な時期において、いわゆる広告事務所に対する一斉賠償請求に取り組む。
2024年(令和6年)1月13日
全国クレサラ生活再建問題対策協議会総会